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雨が好き
第114章 初夏の空
前も、『あ、これ、蒼人さんと一緒に食べたいな』って思ったり、
『蒼人さん今どうしてるかな』って思うことはあった。

でも、こんなに、胸がぎゅうってすることは、
なかったと思う。

一体、私はどうしてしまったのだろう?

「蒼人さん・・・」
ぽつり、と口に出してみる。

つん、て鼻の奥がして
ぎゅっと胸の痛みが強くなって
お腹の中まできゅんきゅんとしている感じがした。

『会いたいよ・・・』

そんな言葉が浮かんできて、
浮かんできたら、たまらなくなった。

ああ・・・これって
これが
『さみしい』って、ことなんだな

私は不意に心の全部で納得した。
前は心で思っていただけの『寂しさ』が
今は、身体全部の『さみしさ』になっている。

今すぐ、駆け出して、蒼人さんに抱きついてしまいたい。
それくらいの、身体全部での想い・・・。

ぎゅっと唇を噛み締めて、
見上げた空はとっても青くて、
それは、蒼人さんがくることはないって言ってる感じだった。

ふたりで過ごした夜を経て
ひとつに深くつながって
私はまた、
ひとりでいることが、もっと、もっと下手になってしまった。

『お電話したいな・・・』

ぽつりと、また呟いた私を
初夏の真っ青な空が、見下ろしていた。

三毛猫がひとつ、小さくあくびをした。
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