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雨が好き
第115章 長電話
時刻は夜の9時・・・

お家には帰っていると思うけれども
ご飯を食べているところかもしれない
お風呂に入ろうとしているかもしれない
もしかして、水際さんが来てて、おしゃべりしてるかもしれない・・・

かけたら迷惑かな
お話、する時間あるかな・・・

多分、ちょっと前の私だったら、ここで最後のボタンを押せなくて、
そっと受話器を置いてしまったに違いない。

今日も、二回、受話器を置いた。
でも、やっぱり・・・ともう一回。
3回目でやっと私は、蒼人さんの携帯電話にお電話をかけることができた。

でも、かけるのに一生懸命で、肝心の『ご用事』を考えていなかった。

あわわわ・・・

私は受話器を持ったまま、慌ててしまう。
黙っていたら、どうしたんだろう、って思われちゃう。
かといって、何を話そうかとか、全然考えていなかった。

「みなとさん?」
蒼人さんが、不思議そうな声で尋ねてきた。

ど、どうしよう・・・どうしよう・・・

思った挙げ句、私の口からは

「あ・・・蒼人さんの声が・・・声が聞きたくてっ・・・」

そんな、あまりにも正直すぎる言葉が出てきてしまった。
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