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雨が好き
第15章 病室
蒼人さんは病室から現場に急行した。結局、次の日の夕方まで病室に戻ることが出来なかった。

「病室に戻ったら、彼女は昏睡していました。そして・・・二度と目を覚まさなかった。」

蒼人さんの目から涙がこぼれた。
雨滴とは違う、雫が、頬を伝い、顎から落ちる。

手が・・・震えていた。

「4年も経っているのに、僕はまだ、あの病室で見た黒い雨にうたれている・・・。雨を見ると、どうしても思い出してしまう。」

そう言って、蒼人さんは、ぐいっと袖で涙を拭った。

「すまない・・・みなとさん・・・。変な話ししちゃいましたね。」

笑っているけど、無理やりなのがすぐわかるような笑い方だった。

なんて・・・言ってあげたらいいの?
私に、何か・・・できないの?

私の中にいくつもの蒼人さんが浮かんでくる。

神社の境内で泣いていた。
虹を見て、ちょっと悲しそうに笑っていた。
雨に濡れる睡蓮を見て、まるで違うところに行ってしまったような顔をしていた。
傘をかけた時、驚いたような目をしていた。
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