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雨が好き
第116章 抱擁
【抱擁】

次の日、約束通り蒼人さんは『みなと町』に来てくれた。

心做しか額が汗ばんでいるような感じがする。

たしかに今日は初夏の夕方にしてはあったかかったのだけど、
もしかしたら、急いできてくれたのだろうかと思うと、
なんだかとても嬉しい気持ちになった。

いつものカウンター席に座る。

「アイスのカフェラテを」
やっぱり注文はアイスだった。

この時間、すでにお客さんはおらず、『みなと町』は蒼人さんの貸切。
一応ちらりとお父さんの顔を見たけれども、
『いいよ』って言っているみたいだったので、
私も蒼人さんのお隣りに座ることにした。

「お仕事が・・・忙しい?」
言ってしまってから、「あっ」って思ったけれども、
口から出てしまった言葉を取り戻すことはできない。

これじゃあ、まるで、なんで来てくれなかったの?
って責めてるみたいになっちゃう・・・

ちょっと、上目遣いになって、そっと顔色をうかがうみたいに見つめてしまう。

怒って・・・ない?

「本当は、夜9時でも10時でも、『みなと町』に行きたかったんだけど・・・
 さすがに遅すぎるかなって・・・」
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