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雨が好き
第116章 抱擁
ここ数日、蒼人さんは家に帰れるのが8時すぎとかになっていたようだった。
そうなると、『みなと町』に寄ろうとすると確かに9時くらいになってしまう。

当然、お店はもう開いてはいない。

『それでもいい』
なんて、言ってしまいそうになって、慌てて言葉を飲み込んだ。
だって、そんな時間に蒼人さんが『みなと町』に来ちゃったら
きっと、次の日のお仕事は大変なことになる・・・から。

わがまま、言っちゃいけないよね。
そう思い直す。
ぐっと、我慢する。

アイスカフェオレを飲んでいる蒼人さんとお喋りをする。
昨日、お電話であんなにいっぱいお話したのに、
不思議なことにお話することが尽きることはなかった。

夜が更けて、あっという間に『みなと町』の閉店時間。
蒼人さんが腰を上げる。

私は思わず「あっ!」と声を漏らしてしまった。
その声に気づいた蒼人さんが、私の方を振り向いたのだけど、
私は、その後の言葉をつなげることができなかった。

えと・・・えっと・・・

少し、もじもじしていると、カウンターの奥からお父さんの声。
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