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雨が好き
第116章 抱擁
「みなとさん」

ゆっくりと蒼人さんのお顔が近づいてくる。
鼻先に吐息がかかり、
さっき飲んだコーヒーの香りと、蒼人さんの匂い。
自然と瞳を閉じてしまう。
そっと触れる、唇と唇

柔らかな温かさ。
全身がふわっと解けて、
体の中がいっぱいに満たされていく・・・

もっと・・・

そんなふうに思ったけれども、
それ以上どうしていいかわからないまま、
蒼人さんの身体がゆるゆると離れていった。

「また明日・・・」
「また・・・明日・・・」

身体の中、何かが欠けてしまったみたいな感じ。
寂しさに似たそれを抱えながら、
私は、小さくなっていく蒼人さんの背中に、

小さくひとり、手を振っていた。
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