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雨が好き
第18章 稜線
「好きな人に、昔の恋人の話をするなんて・・・失礼だって・・・同僚に言われました。」

私がお父さんに励まされたみたいに、
蒼人さんはお仕事場の人に励まされたのかもしれない。

「もう、4年も経つんだし、先に進むべきだって・・・。
 もちろん、そう言われたからってわけじゃないんです。
 ただ、僕は・・・あなたのことが・・・そ、その・・・好きになったから・・・」

彼が、何かを決心したような顔をした。

私は、なぜだかお父さんがあの海岸線で空を見上げた時の顔を思い出した。
全然似ていないのに、蒼人さんもお父さんと同じ顔をしたように感じたのかもしれない。

だから、自然と、言葉がこぼれた。

「心に・・・彼女さん、いてもいいです。
 でも、私も・・・そばにいたいです」

蒼人さんの目が少しだけ大きく見開かれ、そして、ゆらりと揺れる。

その優しい人の瞳には、山の緑がきれいに映っていた。

彼は、唇を噛んで、小さく、うなずいた。
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