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雨が好き
第19章 演奏会
ある時、彼が、ちょっと前から趣味でギターを始めたんだと教えてくれたので、私は聞かせてほしいと強請った。

ちょっと照れたような顔をしたけど、うなずいてくれる。
その時、彼が帰った後に思った。

よく、考えたら、お父さん以外の人に何かをしてほしいと言ったのって、あまり記憶にない。まして、叶えられたことなんてなかった。

『蒼人さんのギターが聴ける』
それはとても特別なことのように私には感じられた。

2日後、彼がギターを持って『みなと町』に来た。
ギターケースは年季が入っていたが、それは彼がそれを中古で手に入れたからだった。

取り出したギターの調律を済ませ、椅子に座って構える。
楽譜をテーブルにおいて、爪弾き始めた。

ポロンポロンとゆっくりとしたたどたどしいメロディライン。
それは私も知っている曲だった。
シンガーソングライターの歌。

曲自体もそうだが、なんというか、弾き方が、なんだか、懐かしいような気がして、胸がキュっとなった。
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