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第19章 演奏会

彼の手が弦の上をゆっくりと滑るように動く。
細くて優しい指が、温かいメロディを生み出していく。

自然と、口から歌が漏れた。

♪麦わら帽子をかぶった君が
　♪夏の日の下に立っている

男性が愛しい女性を想う、恋の歌。

演奏が終わった。お父さんが、カウンターの向こうで拍手をしていた。
「みなとの歌も上手かった」
と付け足してくれたので、私は恥ずかしくなった。

その後は、いつものようにアイスカフェラテを飲んで、少しおしゃべりをして、
今日はお仕事がまだあるから、そんなに長い時間いられないと言ったので、
私は扉のところまで一緒に行った。

バイバイしようとしたら、お父さんが「ちょうどいいからお休みしていいよ」と言ってくれたので、慌ててエプロンを外す。

ギターを担いだ彼と一緒に街を歩く。
特におしゃべりしないけど、あったかい、いい時間。