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雨が好き
第26章 水平線
「僕も・・・あやかれるかな?」

蒼人さんが、言った。

え?

この前と同じ。世界から、音が消えた。

振り仰ぐと、彼が私を見ていた。
私も、目を逸らすことができなかった。

彼の手が私の身体に回り、抱き寄せられる。

「キス・・・していいですか?」
ドキン、と心臓が跳ねる。

でも、その瞬間、私の身体は石のように固まってしまった。
動けなかった。目が見開き、瞳が震えた。

緊張した・・・のではない。
怖かったのだ。

自分でも分からない怖さが、心の奥からにじみ出てきた。
小さく、身体全体が震えだす。

そんな私の身体の異変を察して、
彼は腕の力を抜いた。

「ごめんなさい」
理由がわからない。私にも、分からない・・・。

なぜだか涙があふれる。海の向こうの水平線が、滲んでぼやけていく。
空と海との境目がなくなってしまったようだった。
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