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お題小説 labyrinth(心の迷宮)
第1章 ラビリンス(labyrinth)
 14

「ふうぅ……」

 すると彼はツーっと背中のホクロを指先で軽く撫で…
 そしてその指を離し、わたしの肩を軽く抱いて自分の方に向けてきて…
 つまり、わたしと彼はベッド上で上半身を起こし、お互い下半身は布団を掛けて横並びに座るカタチになった。

 そしてそんな吐息、いや、ため息を吐き…
「ね、ねぇ…あのさ…
 驚かないで聞いてよね…」
 と、呟く様に言ってくる。

「え?、な、なに?」
 もう既にわたしはそんな彼の…
 普通じゃない様子にビビり始めてしまっていた。

 だってそれまでの彼は…
 ナンパしてきた割にはやや大人しめな、いや、どちらかといえば静かといえ、でも、穏やかで優しい雰囲気のある感じであったのだ。

 だから、この驚いた挙句の思いっきりの動揺している感じに…
 わたしはそんな彼の様子に意味も分からず、そして、イヤな予感の不安感しか湧かないでいた。


「ふ……ふうぅ…………」

 そして少し息をタメて、吐息を漏らし…

「…あ、あのさぁ…
 あ、あのね、お、オレもさぁ…
 キミとさぁ…
 お、同じなんだよね……」

「え、な、なにが?」

 なにが同じなの?…

「うん…
 お、オレもさぁ…
 1996年の7月24日生まれのさ…
 AB型なんだよね…」

「え、あ、そ、そうなの?」
 と、その瞬間は…
『なんだぁ、誕生日と血液型が同じなのかぁ…』
 と、それを聞いた刹那はそう軽く思ったのだが、すぐに…

「あっ、え、ええっ」

 その同じという事の…
 同じであるという事に驚きを感じた、いや、わたしはようやくこの事の異常さと重大さに気付いたのである。

 ドキドキドキドキドキドキドキドキ…
 
 そしてその事の重大さに、まるで心臓が破裂してしまうのではないか…というくらいに急激に心が高鳴ってきたのだ。


「ええっ、う、うそぉ………」

 そ、そんなぁ…

 ま、まさかぁ…

 ドキドキドキドキドキドキドキドキ…

 あまりにも激しい高鳴りに、息までもが苦しくなってしまい、目眩までし始めてしまう…

 そ、そんなことって…

 
 チリリン、チリン、チリリン、チリン…

 その時、耳の奥深くから、あの夢の中で鳴っていた風鈴の鈴の音が…

 チリリン、チリン、チリリン、チリン…

 静かに聞こえ、その鈴の音が心の迷宮へと誘ってくる…………


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