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甘いピンクの果実
第1章 元アイドルの女子アナ。生島絵梨花
「店長」
 「早くない。夕方には行けます。そんなメッセージだったけど」いきなりタックルされたかのように抱きしめられた。いい匂いがした。秋葉乃はベッドに寝転びそうになったが相手を抱きしめる。
 「もう逢えないかと思ってました」
 「またそれをいう」もう何回目だろう。このやりとりは、逢うと必ずお約束になっているが相手は冗談のつもりでいっていない。
 「だって、だって店長は記念日大切にしてくれるじゃないですか。でも昨日は逢えなかった。怒ってないですよ。店長お仕事だしワタシも仕事で逢えないときはあるから。でもワタシたち記念日はいつもいっしょに」
 「クリスマスでいえば昨日は絵梨花が朝の情報番組デビューする前日だからイブ。今日はデビューした日だからクリスマスだ。だから記念日は今日だ」
 「微妙に意味わかるしわかんないです。そのたとえ。でも逢えてうれしい」絵梨花は抱きしめた手を離そうとしない」
 「でもいいのか。女子アナとしてテレビにデビューした日にこんな場所で私なんかといても。」
 「いいです。女子アナはいつでも辞めます。辞めて店長のお店で働けるならいつでも辞めます。汗かいちゃったし、ちょっと着替えてきますね。」
 アイドルのときもそうだった。絵梨花はいつもいっていた。アイドルはいつでも辞めます。アイドルになる前もいった。店長のお店で働けるならアイドルにはなりませんと。ずっといたのだ。それだけずっと。秋葉乃は絵梨花がアイドルになる前から、ずっといっしょにいたのだ。当時絵梨花は女子校生で秋葉乃はコンビニの店長の研修生だった。
 ふたりはあの日からずっとつづいている。秋葉乃はあの日を想い浮かべた。
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