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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第1章 女中頭 幸乃(ゆきの) ~ 「西片向陽館」の秘密

誠一は、息を呑んで頬をこわばらせ、躊躇する表情でしばらく押し黙っていたが、やがて小声で口を開いた。 「実は、一高卒業の時に、仲間と連れ立って勢いで遊郭に繰り込んだのですが、緊張して酒を過ごしてしまい、酔いつぶれて何があったのか覚えていないのです。朝、女郎が添い寝してくれていたのは確かなのですが。」
「お気に障りましたら御免なさいませ。私が思いますに、<吉川様は、これから学問を修められるだけでなく、ご家業のますますの隆盛(りゅうせい)のため、世間の事情にも幅広く通じて、何事にも自信を持ったお振舞いがご必要かと。そのためには、世情の一つとして、節度を保ちながらのことですが、女性経験を積んでおくことも必要だ。>ということを、叔父上様は仰りたいのでしょう。女性経験というのは、女体をお抱きになることだけではありません。この下宿の日々の暮らしの中で、女中たちの気持ちを察しながら、やさしく接していただくということも、<大人になる>ということかと存じます。」
誠一が、幸乃の顔をまじまじと見つめながら、 「幸乃さん、有難う。今のお話を聞いて、ここで暮らしていく覚悟が出来たように思います。」 と言った。それを聞いて、幸乃はさらに誠一ににじりより、耳元で、 「そのお覚悟をご自身でお確かめになるために、ここで私をしっかり抱き締めて下さいませ。」 と、密(ひそ)やかな口調で誘った。
「お気に障りましたら御免なさいませ。私が思いますに、<吉川様は、これから学問を修められるだけでなく、ご家業のますますの隆盛(りゅうせい)のため、世間の事情にも幅広く通じて、何事にも自信を持ったお振舞いがご必要かと。そのためには、世情の一つとして、節度を保ちながらのことですが、女性経験を積んでおくことも必要だ。>ということを、叔父上様は仰りたいのでしょう。女性経験というのは、女体をお抱きになることだけではありません。この下宿の日々の暮らしの中で、女中たちの気持ちを察しながら、やさしく接していただくということも、<大人になる>ということかと存じます。」
誠一が、幸乃の顔をまじまじと見つめながら、 「幸乃さん、有難う。今のお話を聞いて、ここで暮らしていく覚悟が出来たように思います。」 と言った。それを聞いて、幸乃はさらに誠一ににじりより、耳元で、 「そのお覚悟をご自身でお確かめになるために、ここで私をしっかり抱き締めて下さいませ。」 と、密(ひそ)やかな口調で誘った。

