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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第4章 女中 清(きよ)
清は、戸田に添い寝した寝床から、夜明け前に抜け出し、冷え冷えした廊下に出て、中庭から四角に切り取られて見える冬の星空を見上げた。
数日前、幸乃の部屋に呼ばれて、<この夏前には、館主の三島様が銀行役員を辞するのを契機に奥方を離縁し、私が後妻に収まる次第となった。三島様の意向で、後の女中頭は清に任せたい。>と、告げられていた。そのことを改めて心に留め、そして、静まり返った「西片向陽館」の中で、今夜も寝間で奉仕している女中たち一人一人に思いを馳せながら、女中部屋に戻っていくのだった。
(完)