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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第3章 女中 千勢(ちせ)

その日の朝、誠一が洗面から戻ると、「次の間」の手火鉢の前に、いつもの黒灰の綿紬を着た女中頭の幸乃が正座し、入れたばかりの炭火を整えていた。その脇で、同じ綿紬を着て、髪を左右に分けて三つ編みにした女中が、朝餉の膳の支度をしていた。女中は、誠一を見ると、急いで幸乃の脇に正座し、畳に指を突いてお辞儀した。それを見てから、幸乃が話し始めた。
「吉川様。お早うございます。これは女中の千勢と申します。今週、初めて吉川様のお当番を勤めさせていただきますが、それにつきまして、お願いがございまして一緒に参りました。」
「お早うございます。ご遠慮なくどうぞ。」
「お言葉に甘えまして。この千勢は、女中働きをしながらでございますが、女子医学専門学校を目指しておりまして、今は、本郷菊坂にある夜間女学校に通っております。成績も良く、来春は、いよいよ最終の五年生になります。」
「何と・・・、立派な志ですね。それを聞いたら、幸乃さんのお願いというのも大体分かりました。喜んで協力しますよ。」

