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第3章 女中　千勢（ちせ）

　「夜学から戻ると、こんな時間になるんだね。疲れるだろうに、よく頑張っているね。」　

　「大丈夫です。朝にも申し上げましたが、こちらでのご奉公は大変恵まれておりますので、何でもありません。あのう・・・今日は、初めてご主人様のお当番になって、しかも初日ですので、学校から戻って手早く湯浴みしてから、急いで参りました。どうぞ、何なりとお申し付け下さい・・・。でも、このような遅い時間からでは、ご主人様には不都合でございましょうか。私の勝手で申し訳ございません。」

　千勢は、そう言うと、有田焼特有の青花紋の急須から、揃いの湯呑にお茶を注ぎ、お盆に載せたまま差出した。誠一は、　「有難う。」　と言いながら、お茶を一口啜（すす）って、千勢に優しく話しかけた。