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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第1章 女中頭 幸乃(ゆきの) ~ 「西片向陽館」の秘密

三島は、しばらく湯船でゆったりした後、丹前を身にまとい、建物の東隅にある館主の座敷に向かった。廊下に面した一枚杉の重厚な木戸を開けると、竹林七賢が描かれた六双の大きな屏風が立てられ、廊下側からの視界を遮っていた。
三島が慣れた足取りで屏風を回り込むと、座敷中央に枕が二つ並べられた夜具が敷かれ、その脇で、薄絹の襦袢を纏った幸乃が、正座してお辞儀をした。床の間の隅に置かれた行燈型の電気スタンドの灯が、幸乃のふくよかな体つきを艶(なま)めかしく浮かび上がらせていた。三島が上布団を跳ね上げ、敷布団の真ん中に<あぐら>に座ると、幸乃は頭を上げ、烏龍茶の入った大きな白磁の中国湯呑の蓋を取り、お盆に載せたまま差出した。

