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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第2章 女中 良枝
【第2話】
昭和9年師走月の上旬、本郷区西片の屋敷町に佇(たたず)む高級学生下宿 「西片向陽館」 の中庭では、葉を落とした欅の大木の枝が、北風に揺れながら鳴っていた。
月曜日の朝、七時前、女中の良枝が、廊下から障子を開けて笠井行雄の部屋の「次の間」に入り、十能から、火起こしした炭を手火鉢に移し終えると、奥の「座敷」とを隔てる襖の前に正座し、声を掛けた。
「ご主人様。お目覚めでございましょうか。」