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脳内妄想短編集
第2章 水中レッスン

 すっかり本来の目的を忘れそうになり、あたしはいったん彼から離れた。欲情が抑えられない。自分の連れにさえ、理性が吹き飛ぶほど欲情したことなんてほとんど無かったのに。
 あたしは努めて明るく、今までの淫靡な雰囲気をかき消すように、聞いた。

「もう、大丈夫? 一人で潜ってみる? そばについててあげるから」

 彼に触っていたら、本当に襲ってしまいそうだった。
 彼はしばらく無言であたしを見ていた。うつむいて、何かを言いかけて口をつぐむ。

「キス……しててください」

 勇気を振り絞るように、それだけ。

「……まだ、一人じゃ怖い?」
「……はい」

 平静を装ってそう尋ねつつも、あたしの心臓はバクバクだった。

「いい、けど。ここであんまりしてると、他の人に見られちゃう」

 今さらといえば今さらだけど、公共の場なのだしそこも気になった。

「水の中なら、バレないと思います」

 珍しく、彼が食い下がる。あたしだって、彼の唇にもっと触れていたかった。欲情に茶色い瞳を潤ませてそんなふうに誘惑されれば、断ることなんてできるはずない。
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