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捥いだピンクの果実
第3章 三話 見合い 3
 秋葉乃と見合い相手は同居はしてないし席も入れていない。秋葉乃がだした条件は三つあった。籍を入れたら苗字が変わるので年頃の娘に気を使わせてしまうので籍はいれない。二世帯住宅用の部屋を用意してください。そこに住む。これなら同居してるように見える。さいごの条件はこれは偽装結婚だ。それだけははっきりしておきます。見合い相手も院長も呆気に取られた。ホントにそれでいいのか訝しがった。これで見合い話がもちこまれなくなる。これはウインウインの関係ですよと秋葉乃はいった。
 偽装結婚して、早三か月になる。偽装結婚は秋葉乃と叔父。その叔父の先輩の院長。その院長の愛人関係にある見合い相手しか知らない。娘の奈々もしらない。結婚を前提におつきあいをしていると思っている。二世帯住宅用のマンションを相手の院長は用意してくれた。そこに秋葉乃も見合い相手の親娘も引っ越しをしたが顔を合わせる機会はほぼない。あっという間の三か月だった。
 そんなある日ふだんは車を使うが秋葉乃は電車を使った。二世帯住宅用に仕事の書類を取りにいくために。駅を出たら女子校生らしき少女の手を中年男が引っ張っている。少女はあきらかに抵抗している。無視しようと思ったが、籍はいれてないが義理の娘のことが頭に浮かんだ。
 「どうしたんですか」秋葉乃は女子校生らしき少女に声をかけた。
 「関係ないだろ。どっか行けよ」めがねリュックがいきがる。
 「いや、この娘いやがってますよ」
 「だから関係ないだろ。関係ない奴は引っ込んでろよ」いきがるメガネリュック。片手でやっつけれそうだ。しかし秋葉乃は手をださないでいたが周囲の人たちが足を止める。注目の的だ。「もういいよ」メガネリュックは逃げるように立ち去った。
 「だいじょうぶ」秋葉乃は少女に声をかける。
 「ありがとうございます」眼に涙を溜めた少女。
 「この辺に住んでるの」
 「山の手です」
 「帰るなら改札まで送っていくよ」嫌がられるかと思ったが少女はありがとうございます。おねがしますといった。ふたりは無言で改札口まで歩いた。白のTシャツにデニムの短パン。梅雨が明けた六月の蒸し暑い日曜日。少女が改札をくぐる。そのままなにもいわず行くかと思ったが振り返って何度も頭を下げ一番線のホームの階段を下りる。階段を下りる前も振り返って頭を下げられた。秋葉乃は軽く手を挙げてその場を後にした。
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