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やっと、逢えた
第3章 せめて、声だけでも
顔を上げて俺を観ると、
少しだけハッとしたような表情をした。


「ご予約の方ですか?」と言うと、

「はい。
でも、少し早く着いてしまったので…」と、
柔らかい口調で微笑む。


ああ。
そうだ。
この喋り方と声。


そう思っただけで、
心が震えて、
抱き締めたくなる。


でも、そういうわけにはいかない。


俺は殊更ぶっきらぼうな口調で、

「どうぞ」と言って、
ドアを開けて彼女を促した。



「失礼致します」
と言って、サロンに足を踏み入れた。



その音で中から葵が出て来る。


「いらっしゃいませ。
あら、蓮…白蓮さまもご一緒でしたか」と言いながら、
目の奥が笑っているように見えて、


「いや。
外でたまたま一緒になっただけだ。
あとは宜しく」と言って、
彼女に会釈もしないでスタスタと自室に向かった。


しまった。
ごゆっくりとか、
何か言えば良かったと思って振り向くと、
施術室のドアが閉まるところで、
肩をすくめて自分の部屋に入った。



やっぱり、彼女だ。

『特別な』ヒト。
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