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やっと、逢えた
第4章 触れるだけで

葵に声を掛けてみたけど、返事はなかった。
本当に先に帰ったらしい。
「遅くなったし、心配だから送ります」と言うと、
そっと微笑んで頷いてくれる。
車のドアを開けてあげて助手席に座らせてから、
運転席に回る。
いつものくせでエンジンを掛けて、
少しアイドリングの音を聴いてから車を出した。
静かに流れるピアノの音。
住所も訊かずに自宅マンションの前まで送って、
しまったと思ったけど、
彼女はそのことについて特に何も言わなかった。
「あ。
そうだ。
これ、病院の住所…」と、
グローブボックスに入れっぱなしの名刺入れから一枚取り出して手渡す。
彼女は両手で丁寧に受け取って、
「私はもう、名刺がなくなってしまったので…」と笑った。
「その携帯、俺のだから、
何かあったらいつでも掛けて?
明日の朝、迎えに来るから一緒に行こう。
9時頃で良いかな?」
「はい。ありがとうございます」
「じゃあ、明日」
「おやすみなさいませ」
そういうと、車が見えなくなるまで、
そこに立って見送ってくれていた。
曲がって、ミラーから彼女の姿が消えた時に、
住所も訊かずに家まで運転してきたことを少し考えた。
まあ、良いか。
カルテを読んだってことで。
明日も会える。
そう思ったら口笛を吹きたくなる。
でも。
触れたら気絶するほど消耗させてしまう。
触れることも出来ないのか。
本当に先に帰ったらしい。
「遅くなったし、心配だから送ります」と言うと、
そっと微笑んで頷いてくれる。
車のドアを開けてあげて助手席に座らせてから、
運転席に回る。
いつものくせでエンジンを掛けて、
少しアイドリングの音を聴いてから車を出した。
静かに流れるピアノの音。
住所も訊かずに自宅マンションの前まで送って、
しまったと思ったけど、
彼女はそのことについて特に何も言わなかった。
「あ。
そうだ。
これ、病院の住所…」と、
グローブボックスに入れっぱなしの名刺入れから一枚取り出して手渡す。
彼女は両手で丁寧に受け取って、
「私はもう、名刺がなくなってしまったので…」と笑った。
「その携帯、俺のだから、
何かあったらいつでも掛けて?
明日の朝、迎えに来るから一緒に行こう。
9時頃で良いかな?」
「はい。ありがとうございます」
「じゃあ、明日」
「おやすみなさいませ」
そういうと、車が見えなくなるまで、
そこに立って見送ってくれていた。
曲がって、ミラーから彼女の姿が消えた時に、
住所も訊かずに家まで運転してきたことを少し考えた。
まあ、良いか。
カルテを読んだってことで。
明日も会える。
そう思ったら口笛を吹きたくなる。
でも。
触れたら気絶するほど消耗させてしまう。
触れることも出来ないのか。

