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愛欲ハーレム・妄想の処女〜琴葉【官能作家・霧山純生の情事】
第16章 鷹月マリア
 翌日。仕事の合間にある人物へ電話を入れた。呼び出し音が十回鳴っても出ない。忙しいのもしれない。あるいは私と話したくないのかもしれない。切ろうとした瞬間に、

「もしもし。鷹月(たかつき)です」

 女の声が言った。落ち着いた大人の女の、少し低めの声だ。

「電話をくれるなんて思わなかったわ。霧山先生」
「ああ、忙しいのかい」
「新作、読んだわよ。ガラスの檻という陵辱もの」
「それは……どうも。ありがとう」

 こちらの問いは無視か。
 変わっていないな。

「連絡をくれなくても霧山先生のファンですもの。シリーズ二巻めの奴隷館のほうが好きかな。四宮教授はタイプだわ。悪党でセックスがうまい」

 皮肉が混じった賞賛に苦笑する。

 電話の相手は鷹月マリア。川崎の堀之内にあるソープランド、デスティニーグループの統括マネージャーだ。若い頃は"巨蟹宮ルナ"の源氏名で、超高級店であるトロピカルのトップの泡姫だったという。二十代の半ばで引退、スカウトや講習員の下積みから今の地位へ登ったやり手だ。
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