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未亡人玩具
第1章 お礼
 とにかく必死に頑張って来た。三年前、小百合の夫は小さいながらも会社を経営してやっと軌道に乗り始めた矢先だった。出張先で倒れそのまま逝ってしまった。享年39歳、脳梗塞だった。当時35歳だった小百合には何が何だかわからなかった。全てを放棄する選択肢もあったが、夫が残したものを失いたくなかった。
 
 それでも小百合がここまで頑張って来れたのは、夫が残してくれた人脈が大きかった。会社経営のベテランである大先輩たちが常に助けてくれた。小百合とは親子ほども離れていたこともあり、実の娘のように親身になって助けてくれた。皆、紳士で信頼できる人ばかりであった。

 まもなくクリスマスだ。街中がクリスマス一色になり、今まで会社のこと以外は考えずに過ごしていた小百合にもほんの少しだけ心に余裕ができて立ち止まった。あれから三年か…。会社はなんとか続けられているし、今年くらいはクリスマスとお正月はゆっくりしてもいいんじゃないか。そんな考えがふと浮かんだ。まずはクリスマスパーティーをしよう。子どもが出来なかった自分には、もう家族がいない。せめて一番お世話になった人たちを招待して改めてお礼を言いたい。そう思いつき、夫と自分の恩人たちにメッセージを送った。

 『主人の死から早三年が過ぎようとしています。私がここまで何とかやってくることができたのは、ひとえに皆様の助けがあったからこそです。今までのお礼を兼ねてクリスマスパーティーをしたいと存じますがいかがでしょうか。場所はまだ決めていません。まずはご都合を伺いたく連絡致しました。』

 すぐに返信が来た。さすが経営者たちは反応が早い。

 『24日でも25日でも空いてますよ。小百合さんとパーティーでしたら予定があっても空けますよ!』

 『場所は私の別荘でどうですか?車で1時間半で着きますし料理等の準備は管理人に手配させます。』

 『おお、それはいいね。ゆっくり飲んで翌日帰ってもいいな。』

 『そんな…お礼のためにご招待したいのに、お世話になるのは…』

 『何言ってるんですか、お礼のパーティーを考えてくれただけで十分ですよ。』

 『そうそう。それで十分。たまには会社を離れて騒ぎましょう!』
 
 そんな会話が続き、小百合は結局パーティーに招待される側になってしまって申し訳なく思った。

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