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心の中のガラスは砕けて散った
第3章 依頼
翌日 

「 パパ!!! 早く!!! 」
玄関を出た 詩音が家の中に声を掛け
靖之がリモコンを操作したのを見て詩音は
後部座席に乗りシートベルトを締めて振り返って
靖之の姿を追って来た 由美が後部座席に乗り
車は走りだした 30分程走り幹線道路に有る
案内に従い右折した 目の前の緩やかな山間
山間の麓に目的の動物園、家を購入した時一度来たが
詩音はその時3歳 来た事を忘れていた

駐車場に車を止め 走る様に急ぐ詩音の手を引いて
入口へ向かった 長男と由美がチケットを購入して
詩音に長男がチケットを渡すと、嬉しそうに入口へ
掛け出して行く、二人の後を歩いて園内に入って行った
目の前に動物園の目玉、レーサーパンダ館を通り過ぎ
坂道を上がり 右手にキリンが草を食む姿が見えた
長男に手を引かれた詩音が 檻の柵の前に立ち尽くし
驚いた様に見上げる姿が見えた、

「 おおきい !!! たかい !!! 」
靖之が近寄り 詩音が手を伸ばして来た
抱き上げ詩音は顔を上げ、草を食むキリンの姿から
視線を外さず、靖之に同じ言葉を言い続けていた

「 お兄ちゃんと 少し回って来るネ 」
靖之の耳元で囁いた由美が キリンの檻の前で
飽きて来た長男の手を引いて猛獣館へ向かって
歩いて行く

「 ママの処行こうか? 」
抱き上げた詩音に言うと、草を食むキリンを見上げ
首を振った 詩音を抱いたまま回りを見回すと
赤ちゃんを連れた夫婦、老人夫婦に連れられた孫だろうか
走る後ろを老婆が追う姿が、ふと深く息を吐き出した
3月の最初の週で藤堂との契約は終わる、何もなければ
何年か先、孫を追う老夫婦の様に、自分達も成って行く姿を
安心料と思おう 靖之は詩音と草を食むキリンを見上げ
頷いた
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