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第3章 依頼

夕刻　

日中の強い雨も小降りに成り　街灯の明かりに細かな雨が
雨筋を見せ、昨夜と同じ様に車から降りた藤堂は　空き家の
庭の中へと身を潜め　バックから取り出したイヤホンを耳に
差し込む、子供の声と共に食器を合わせる音が聞こえて来た
黒いレインコートを羽織り、持参した黒い大型のゴミ袋を
尻の下に当て、バックの中から缶コーヒーを取り出して
一口飲み込んだ時、電話の呼び出し音が大きく聞こえて来た
　
・・・もしもし　あっ　少し待って！！・・・
由美が慌てた声で通話を止め　ドアの開閉音が続いた
藤堂は　受信機のダイヤルを切り替える

・・・　めんなさい　昨日からなの　・・・

・・・　来週？　多分大丈夫だと思う　・・・・

・・・　うん　お母さんに　頼むから　・・・

・・・　一応　もう一度　そう　うん　・・・・

・・・　有難う　楽しみにしてる　・・・・

由美が寝室から出るドアの開閉音に　藤堂はまた
ダイヤルを切り替え　耳の中にテレビアニメの効果音が
聞こえ、同時にプッシュホンを押す音が聞こえてくる

・・・　もしもし　お母さん　由美だけど　・・・

・・・　来週の水曜　うん　そう　会社で送別会有るの　・・・

・・・　お世話に成った人、なんか急な転勤で　３月１５まで
　　　　そうなの　良いかな　うん　子供達も爺爺に逢えるの
　　　　喜んでるから　うん　お願い　・・・・