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こんなに晴れた素敵な日には先輩の首を絞めたい
第13章 エピローグ 世界はそれを愛と呼ぶ
 先輩はよく通る声を響かせてAメロを歌っている。


 あれから嶋田先輩とお付き合いするようになったことは2年目研修医になってから母にも打ち明けて、私が浮気男を捨てて別のお医者さんと交際し始めたことには母も満足している様子だった。

 嶋田先輩は実家も開業医だと言えば母はもっと喜ぶだろうけど、それを伝えるのは私が初期研修を修了した後にしようと思っている。

 今でもラブホテルでよく先輩の首を絞めてあげているなどということは、あの母に話せるはずもない。


 先輩は気分が高まっている様子でBメロを歌い始めた。


 こんなに太っていて顔もいまいちで、今でも変態性欲が改まっていないこの人をどうして私は好きなのだろうかと考える。

 先輩がどれだけ醜くても総合診療医の仕事を愛していて、未熟な研修医に寄り添ってくれる素敵な指導医であることに変わりはない。

 そして、私が一番辛かった時にそばにいてくれた人であることも。


 先輩は大声を張り上げてサビを絶唱する。


 私は嶋田先輩のことが好きだ。先輩とセックスをするのも好きだし、先輩に馬乗りになって首を絞めてあげるのも大好きだ。

 いつか、この人と素敵な家庭を作りたいとさえ思う。私は素敵な家庭で育つことができなかったから。

 もし子供が生まれたら、どうか先輩の変態性欲は遺伝しませんように。


 最後のメロディに入った所で、私も先輩と一緒に歌いたくなって部屋にもう1つあるマイクを手に取った。


 すうっと、息を吸い込んで。



「ラブ・アンド・ピース!」
「ラブ・アンド・ピース!!」

「ラブ・アンド・ピース!」
「ラブ・アンド・ピース!!」

「ラブ・アンド・ピース!」
「ラブ・アンド・ピース!!」



 こんなに気分が晴れた素敵な日には。


 先輩の、首を絞めたい。


 (完)
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