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奴隷館 Crime d’amour〜Mの肖像
第2章 美しきヴァイオリニストの淫夢
「なんでしょう」

 艶っぽい目で見つめてくる増島香緒里へ、それまでしたことのない質問を投げかけた。

「いじめられてみたいですか? 夢の中のあなたのように、いじめられたいと思ったことはありますか」

 返事はない。香緒里は黙ったままだ。

「私は医師です。医師には守秘義務があります。だからあなたがおっしゃる内容はどこにも漏れません」

 香緒里がためらっているのを感じたので助け船を出す。すると、美貌のヴァイオリニストが小さくうなずいた。

「お恥ずかしい話ですが。はい」
 
 消え入るような小さな声で、矢島の質問を肯定した。

「その夢から覚めたあと、いつも身体が熱くて、腰の奥が重くうずくんです。そして、その……いつも……下着が、ぐっしょり濡れていて……ああ、恥ずかしい」

 香緒里の告白に、矢島はなるほどと相槌を打つ。そしてさらに確信を深める。

「先生。わたしは病気なのでしょうか。こんな……なんていやらしい」
「そんなことはありませんよ」

 優しく微笑み、否定する。

 おそらくこの女性は育ちが良いのだろう。
 SMの世界など知らずに生てきたのだ。
 さぞかしつらかっただろうに。
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