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奴隷館 Crime d’amour〜Mの肖像
第18章 エピローグ〜それぞれの日常へ
「もしもし。お疲れ様です。末永課長補佐」
「電話をもらったみたいだけど、どうしたの。加藤さん」

 彼は海外営業担当課のチーフだ。我が社の、海外支社との連絡調整の責任者だ。

 私は遅めの夏休み休暇を取ってここへやってきた。今日は金曜日だから、私が休暇中なだけで、会社の業務は平常どおりに行われている。

 その私へ連絡をしてくるということは?
 嫌な予感がした。

 しかし。

「今日が出欠確認の締め切りなんですよ。暑気払いの。課長補佐は出していないでしょう?」

 部下の呑気な声に「はっ?」と、気が抜けた返事をしてしまった。

「暑気払いですって?」
「そうですよ。七月と八月は忙しかったから、ちょっと遅いですけど。ほら。和食は好きじゃないとおっしゃった課長補佐のためにですね。ワインバルを予約したじゃないですか」

 ああ……そうだった。
 うっかりしていた。

「どうしますか? まさか欠席なんて……」
「ふふ。行くよ。もちろん」
 
 笑いながら返事をした。

「それじゃあこれで失礼します。休暇中なのにお邪魔してすみませんでした」
「いいわよ。別に」
「どうぞ良い週末を」
「ありがとう」
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