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コンビニバイトの男の子
第4章 食事会

【12】
・・・
『旦那さん、まだ大丈夫ですか?』
『うん。帰宅の連絡、まだ無いから』
『そうなんですね。よかった』
階段を降りてきた萩子が、照明のスイッチを押した。真っ暗だった廊下にぱっと明かりが灯る。
玄関に向かって悠希が歩いていき、その後ろを萩子が寄り添って付いていく。悠希が訪問した時よりも近い距離なのは、そのまま心理的な距離を表しているようだった。
悠希がスニーカーを履き終えて向き直ったところで、萩子が声を掛けた。
『ごめんね、遅い時間まで』
『いえ、僕の方こそすみませんでした。・・・慰めてもらっちゃって。ふふっ』
悠希が照れくさそうに笑った。
『いえいえ・・・。ふふふっ』
萩子もつられるように笑い声を上げた。
悠希は安堵の表情を見せた。
『もう大丈夫そうですね』
『うん。ありがとう』
『それじゃ』
悠希が玄関ドアの方を向いた。
萩子は離れていくその後ろ姿を見ている。
ドアノブに手を掛けた悠希の動きが止まった。
一瞬、静止画のようにふたりがフリーズする。
悠希が振り返るのと、萩子が裸足のまま三和土に降りるのが同時だった。
駆け寄る萩子を悠希が抱き止め、萩子が腕を悠希の背中に回して抱き締めると、背伸びをして唇を重ねた。その日何度もしていた濃厚なディープキスでは無く、触れるだけのキスだったが、その時間はいちばん長かった。お互いに相手を名残惜しむように、延々と続いた。唇以上に、心を重ね合っているようだった。
漸く唇が離れると、悠希がにっこり笑う。
『これは、何のおまじないですか?』
『ううん。これはありがとうの気持ち』
『僕の方こそ、ありがとうございました』
そこで悠希が真顔に戻ると、青年とは思えない、萩子を愛おしむ表情で、
『じゃあ、また』
と告げた。
萩子も甘えるような声音で、
『うん、また』
と応えた。
悠希が玄関ドアを開けて、真っ暗な外へと出ていく。
萩子はドアの隙間から見送った後、長い時間ドアの前に佇んでいた。
・・・
・・・
『旦那さん、まだ大丈夫ですか?』
『うん。帰宅の連絡、まだ無いから』
『そうなんですね。よかった』
階段を降りてきた萩子が、照明のスイッチを押した。真っ暗だった廊下にぱっと明かりが灯る。
玄関に向かって悠希が歩いていき、その後ろを萩子が寄り添って付いていく。悠希が訪問した時よりも近い距離なのは、そのまま心理的な距離を表しているようだった。
悠希がスニーカーを履き終えて向き直ったところで、萩子が声を掛けた。
『ごめんね、遅い時間まで』
『いえ、僕の方こそすみませんでした。・・・慰めてもらっちゃって。ふふっ』
悠希が照れくさそうに笑った。
『いえいえ・・・。ふふふっ』
萩子もつられるように笑い声を上げた。
悠希は安堵の表情を見せた。
『もう大丈夫そうですね』
『うん。ありがとう』
『それじゃ』
悠希が玄関ドアの方を向いた。
萩子は離れていくその後ろ姿を見ている。
ドアノブに手を掛けた悠希の動きが止まった。
一瞬、静止画のようにふたりがフリーズする。
悠希が振り返るのと、萩子が裸足のまま三和土に降りるのが同時だった。
駆け寄る萩子を悠希が抱き止め、萩子が腕を悠希の背中に回して抱き締めると、背伸びをして唇を重ねた。その日何度もしていた濃厚なディープキスでは無く、触れるだけのキスだったが、その時間はいちばん長かった。お互いに相手を名残惜しむように、延々と続いた。唇以上に、心を重ね合っているようだった。
漸く唇が離れると、悠希がにっこり笑う。
『これは、何のおまじないですか?』
『ううん。これはありがとうの気持ち』
『僕の方こそ、ありがとうございました』
そこで悠希が真顔に戻ると、青年とは思えない、萩子を愛おしむ表情で、
『じゃあ、また』
と告げた。
萩子も甘えるような声音で、
『うん、また』
と応えた。
悠希が玄関ドアを開けて、真っ暗な外へと出ていく。
萩子はドアの隙間から見送った後、長い時間ドアの前に佇んでいた。
・・・

