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コンビニバイトの男の子
第5章 誕生パーティー

ちょうどその上のスペースに置かれている水切りカゴには、以前お酒を飲む時によく使っていた、江戸切子のグラスがふたつ伏せて置かれていた。
「これ、使ったんだ・・・」
貴之が思わず呟く。
萩子と行った旅行先で、たまたま開催していたガラス陶器市を散策していた時に見かけてふたりとも一目惚れし、値段は結構したが結婚一周年の記念にと購入したグラスだった。
購入した直後は、このグラスに萩子の好きなお酒を注いでふたりでよく飲んでいた。大切なものなので、使った後にこれだけは食洗機は使わずこのように手洗いしていた。ただ、健康を気にしてお酒の量を減らすようになり、普段使いには勿体なくて、使う機会が減っていった。
(この家で使ったのは、引っ越し祝いで飲んだ時だけだったか?)
その時のことを思い返すように、ダイニングテーブルに目を向ける。ダウンライトの灯りがかろうじて届くところに、1枚の紙が置いてあることに気が付いた。
コップの水を飲み干してキッチンに置くと、ダイニングに移動して紙を手に取る。そこには、萩子からのメッセージが書かれていた。
《貴之さん、おかえりなさい。すみませんが、疲れているので先に寝ます。おやすみなさい》
いつもの帰宅メッセージの返信ではなく、こうしてメモに書いて伝えたのは、余計な心配や詮索されずに済むと考えたからだろうと思った。
貴之は、紙を手にしたままリビングのソファに腰を下ろすと大きく深呼吸する。先程まで微かに感じていた、消臭スプレーのラベンダーの香りがより強く鼻をくすぐった。
(このソファの周囲にたくさん吹きかけたってことか・・・)
貴之は目を瞑り、暫くじっとしていた。呼吸音が、徐々に荒くなっていく。
「よしっ!」
小さく一言呟いて勢いよく立ち上がると、メモをダイニングテーブルの元の場所に置いて、キッチンに戻った。もう一度水を飲み、使ったコップを手で洗って水切りカゴに置こうとしたが、思い直してキッチンペーパーで拭き取り食器棚に戻す。ダウンライトを消し、ごみは捨てずに鞄と一緒に手にしたまま2階に上がった。
寝室の前で立ち止まるとドアを少し開けて、ぐっすりと眠っている萩子の様子を覗き見た。
(シュウ、お疲れ様)
心の中でそう告げてドアを閉める。
(明日は休みだし、ちょっとだけ片付けておくか)
貴之は仕事で使っているノートPCの入った鞄を持ち替えると、書斎に入っていった。
「これ、使ったんだ・・・」
貴之が思わず呟く。
萩子と行った旅行先で、たまたま開催していたガラス陶器市を散策していた時に見かけてふたりとも一目惚れし、値段は結構したが結婚一周年の記念にと購入したグラスだった。
購入した直後は、このグラスに萩子の好きなお酒を注いでふたりでよく飲んでいた。大切なものなので、使った後にこれだけは食洗機は使わずこのように手洗いしていた。ただ、健康を気にしてお酒の量を減らすようになり、普段使いには勿体なくて、使う機会が減っていった。
(この家で使ったのは、引っ越し祝いで飲んだ時だけだったか?)
その時のことを思い返すように、ダイニングテーブルに目を向ける。ダウンライトの灯りがかろうじて届くところに、1枚の紙が置いてあることに気が付いた。
コップの水を飲み干してキッチンに置くと、ダイニングに移動して紙を手に取る。そこには、萩子からのメッセージが書かれていた。
《貴之さん、おかえりなさい。すみませんが、疲れているので先に寝ます。おやすみなさい》
いつもの帰宅メッセージの返信ではなく、こうしてメモに書いて伝えたのは、余計な心配や詮索されずに済むと考えたからだろうと思った。
貴之は、紙を手にしたままリビングのソファに腰を下ろすと大きく深呼吸する。先程まで微かに感じていた、消臭スプレーのラベンダーの香りがより強く鼻をくすぐった。
(このソファの周囲にたくさん吹きかけたってことか・・・)
貴之は目を瞑り、暫くじっとしていた。呼吸音が、徐々に荒くなっていく。
「よしっ!」
小さく一言呟いて勢いよく立ち上がると、メモをダイニングテーブルの元の場所に置いて、キッチンに戻った。もう一度水を飲み、使ったコップを手で洗って水切りカゴに置こうとしたが、思い直してキッチンペーパーで拭き取り食器棚に戻す。ダウンライトを消し、ごみは捨てずに鞄と一緒に手にしたまま2階に上がった。
寝室の前で立ち止まるとドアを少し開けて、ぐっすりと眠っている萩子の様子を覗き見た。
(シュウ、お疲れ様)
心の中でそう告げてドアを閉める。
(明日は休みだし、ちょっとだけ片付けておくか)
貴之は仕事で使っているノートPCの入った鞄を持ち替えると、書斎に入っていった。

