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第3章 BLACKMAIL

彼はフリーになりたての頃、政治評論家や、インテリで売り出しているタレントのゴーストライターをしていた、とは伝えなかった。

「はい…」と答え、彩芽は落ち着いてハンカチで涙を拭いていた。

「先生のファンは…すぐに気付いてくれると思いますよ…その小説を本当は誰が書いたか…」

田所は息苦しくなり、再び深呼吸をした。

「君はまだ編集部員だ…君がこんな重要なことを決められる訳ないじゃないか…」
田所のその声は、話すスピードが速くなり、はっきりと怒りを抑えている様子が現れていた。

「先生…私…編集長にだけ…先生との出会いを話したんです…母と先生の関係も…だから編集長は『任せる…』と言ってくれました…割と自由な社風だったと気付きました…」

田所は彩芽の何かに憑依された様な、感情の消えた目を見て、怖くなってきていた。先程までの楽しいやりとりで、男は確かに彩花の姿を重ねた。今は、この子が本当に彩花の娘なのか…という確信が持てなくなっていた。