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第4章 秘密保持契約

「母の手紙を読んで…信じられなかった…本当はもっと心の準備ができてから…母の想いを知りたくて…もっと後に…通らなくてはいけない道だと思っていたのに…抜け出せないよ…」

彼女は畳の上をムカデのように這いずり回っていた。

田所はそんな様子を、彼女が先程まで座っていた場所から眺めていた。

彩芽の耳に足音が忍び寄ってきた。仰向けになって畳の上を進もうにも、うまくいかない。

目の前に田所の顔が見えてきた。
彩芽は「はぁはぁ…」と息荒く、男を見つめた。
失望感にも似た脱力に、全身が支配されていく。

「これは…どうやっても…解けないんですか…？」

彩芽は肉体の芯から放出される熱に苦しむように、膝を丸めて、視線を田所から逸らそうとしていた。

男は「無理だろうね…」と冷静に伝えた。
女は「はぁはぁ…」と激しい息遣いに、体力を消耗しているようだった。

「秘密保持契約の拘束力は体感できただろう…」
田所は彩芽の頬に手をそっと添え、笑みを浮かべていた。

彩芽は目を閉じ、体を揺ら揺らと動かし、何とか拘束から逃れようとしていた。