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特別捜査官・優子
第3章 アメとムチ
その時に佐々木の手が粘着テープに触れた。そっとうなじの方からテープを外そうとしていた。彼女にとっては外してほしくなかった。なぜなら佐々木の問いに答えなければならなくなる。

「まさか…興奮なんて…してないよな…?」
男の落ち着いた声だった。
その問いに優子の全身に鳥肌が走っていた。

優子は粘着テープがビリビリと音を立て、慎重に外されていくのが耐えられなかった。早く自分の口で、言葉で答えたかった。優子の暗黙の了解で、男が次の行動に進むことを、なんとしても拒否したかった。

彼女は黒い粘着テープが剥がされる間、形だけの抵抗を見せていた。それには目的があった。視界が広がったことで、首をゆっくりと左右に回し、この部屋の様子を探ろうとした。

白い壁に覆われた、正方形の箱のようだった。窓が一つもなかった。白い壁は僅かに光沢が見られ、目の前の壁には、アナログ式の時計が天井近くに設置されていた。椅子やテーブル、ソファーなどもなかった。ソフトなマットも白で統一され、異様な雰囲気を醸(かも)し出していた。
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