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蛇の檻
第1章 『蛇の檻』 第一章 ――目覚め
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暗闇の中で、柊 怜奈(ひいらぎ れいな)はゆっくりと意識を取り戻した。
瞼を開くと、仄暗いシャンデリアの灯りがゆらゆらと揺れている。
目の前に広がるのは、見たこともない部屋だった。
黒い壁、重厚なカーテン、漆黒の大理石の床。
湿った空気の中、どこかで水が滴る音がする。
「……ここは……?」
呆然と呟いた声が、静寂に吸い込まれる。
手首が動かない。
気づけば、黒い革の拘束具が嵌められ、両手はYの字に天井から吊るされ、固定されていた。
足首にも革の拘束具が嵌められ、冷たい鎖が床へと固定されている。
心臓が強く跳ねる。
――これは、夢じゃない。
恐怖に駆られながら、怜奈は必死に周囲を見渡した。
壁には燭台が並び、低い調べのクラシックが流れている。
どこか異国の古い洋館を思わせる、退廃的な空間。
しかし、それだけではない。
部屋の奥、黒い革張りのソファに、一人の男が座っていた。
――仮面の男。
彼は黒のスーツを纏い、スラリとした長身を崩すことなく座っている。
だが、その顔は――白銀の仮面に覆われ、表情がまったく見えなかった。
漆黒の瞳だけが、仮面の奥からじっと怜奈を見つめている。
まるで、獲物の動きを観察する蛇のように。
「目が覚めたか」
低く、冷たい声が響いた。
怜奈は息を呑む。
この男が、ここに自分を閉じ込めたのか――?
「お前は、蛇の檻(へびのおり)に囚われた」
静かに告げられた言葉に、肌が粟立つ。
「蛇の……檻?」
怜奈の頭の中で、その言葉が反響する。
「ここでは、すべての理が覆る。
支配する者と、支配される者。
選ぶことはできない。ただ、受け入れるしかない」
男は足を組み、仮面の奥から怜奈を見下ろした。
「お前が生き延びられるかは――これから次第だ」
背筋に冷たいものが走る。
「……あなたは、誰?」
恐る恐る問いかけると、男は微かに笑ったように見えた。
だが、仮面が邪魔をして、その感情がどこまで本物なのかは分からない。
「俺は、お前の新しい主人だ」
――理解できない。
「何を言っているの?」
声が震える。
男はゆっくりと立ち上がった。
革靴が床を踏みしめる音が、妙に静寂を際立たせる。
怜奈は本能的に身を引こうとした。
だが、鎖が足を絡め取る。
逃げられない。
瞼を開くと、仄暗いシャンデリアの灯りがゆらゆらと揺れている。
目の前に広がるのは、見たこともない部屋だった。
黒い壁、重厚なカーテン、漆黒の大理石の床。
湿った空気の中、どこかで水が滴る音がする。
「……ここは……?」
呆然と呟いた声が、静寂に吸い込まれる。
手首が動かない。
気づけば、黒い革の拘束具が嵌められ、両手はYの字に天井から吊るされ、固定されていた。
足首にも革の拘束具が嵌められ、冷たい鎖が床へと固定されている。
心臓が強く跳ねる。
――これは、夢じゃない。
恐怖に駆られながら、怜奈は必死に周囲を見渡した。
壁には燭台が並び、低い調べのクラシックが流れている。
どこか異国の古い洋館を思わせる、退廃的な空間。
しかし、それだけではない。
部屋の奥、黒い革張りのソファに、一人の男が座っていた。
――仮面の男。
彼は黒のスーツを纏い、スラリとした長身を崩すことなく座っている。
だが、その顔は――白銀の仮面に覆われ、表情がまったく見えなかった。
漆黒の瞳だけが、仮面の奥からじっと怜奈を見つめている。
まるで、獲物の動きを観察する蛇のように。
「目が覚めたか」
低く、冷たい声が響いた。
怜奈は息を呑む。
この男が、ここに自分を閉じ込めたのか――?
「お前は、蛇の檻(へびのおり)に囚われた」
静かに告げられた言葉に、肌が粟立つ。
「蛇の……檻?」
怜奈の頭の中で、その言葉が反響する。
「ここでは、すべての理が覆る。
支配する者と、支配される者。
選ぶことはできない。ただ、受け入れるしかない」
男は足を組み、仮面の奥から怜奈を見下ろした。
「お前が生き延びられるかは――これから次第だ」
背筋に冷たいものが走る。
「……あなたは、誰?」
恐る恐る問いかけると、男は微かに笑ったように見えた。
だが、仮面が邪魔をして、その感情がどこまで本物なのかは分からない。
「俺は、お前の新しい主人だ」
――理解できない。
「何を言っているの?」
声が震える。
男はゆっくりと立ち上がった。
革靴が床を踏みしめる音が、妙に静寂を際立たせる。
怜奈は本能的に身を引こうとした。
だが、鎖が足を絡め取る。
逃げられない。
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