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夜に咲く名前のない恋人達
第1章 新生ふらっと#らぶ
新生ふらっと#らぶのお披露目ライブの日。

地下アイドルの主な活動は、毎日のように行われている、アイドルフェス。

500人規模のライブハウスに、複数のグループが出演して、ようやく埋まるのが普通だ。

20分ほどのライブを終えたら、特典会、チェキ会と呼ばれるファンとの交流の場が始まる。

1枚2000円のチェキ券。

そこにサインやメッセージを書きながら、1分ほどの会話を楽しむ。

それが、地下アイドルにとっての大切な収入源だった。

でも、私の前には誰もいない……

デビューの祝儀的な意味で、ファンが少しくらいは流れてきてくれると思ったのに。

実際に人が並んでいるのは、姫先輩目当ての人達。
ライブハウスの通路が満員電車のようになるほどの人気を誇っていた。

同じグループ内に月に50万円以上稼ぐ者と、5万円も稼げない者がいるというのは、この業界ではよくあることである。

30分が過ぎても、ぷりんの列には誰もいないまま。

「……あっ!」

ようやく、初めてのファンの人が来てくれた。

30代くらいの、眼鏡をかけた地味なおじさん。

誰だっていい。こうして私のもとに来てくれることが、何よりも嬉しかった。

「ありがとうございますっ!!」

ぷりんは満面の笑みで、眼鏡のおじさんと指でハートを作って、ツーショットチェキを撮った。

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