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夜に咲く名前のない恋人達
第1章 新生ふらっと#らぶ
チェキを撮影した後、人見知りのぷりんは会話が全く続かない。

「…………」

沈黙に気を使ってくれたのか、おじさんが口を開いた。

「アイドルになったきっかけって、誰かに憧れてたとか?」

「私、心結ちゃんに憧れていたんですっ!!同じ黄色担当になれたのも、すごく嬉しくて……」

そう答えたものの、また会話が途切れる。

すると、おじさんは少し申し訳なさそうに笑いながら言った。

「心結ちゃん、すごかったよね? 俺、姫ちゃん推しだから推してあげられないけど、頑張ってね?」

「あ……姫先輩、可愛いですよねっ!!頑張りますっ」

その後、おじさんは姫の元へ向かった。

しばらくすると隣からぷりんの元に聞こえてくる、甘えたような声。

姫先輩と私の所に来てくれたおじさんだ……

「他の女のところに行ってたでしょ? 姫のこと、好きじゃなくなった?」

「デビューしたばかりだし、行ってあげようかなって思って……」

「姫だけじゃないと、もう嫌いになっちゃうぞ? メッセージだって『、』しか書かないようにしちゃうけど、それでもいいの?」

小さな体から上目遣いで睨みを効かせる姫の目に、ほとんどの男は墜ちてしまう。

「ごめんね。姫ちゃん以外の所に絶対に行かないから許して?」

「じゃあ許してあげるねっ!!」

そう言って満面の笑みで、おじさんを見つめる姫。

地下アイドルには、大手事務所のアイドルグループにはない、独特の文化がある。

浮気者はアイドルから干される。嫌われるというものが存在するのだ。

ヤキモチ妬いてるよ?くらいの可愛い言い方の子もいれば、姫のようにかなり圧をかけてくる子もいる。

こうして、デビュー日のぷりんのチェキ列には、たった 一人しか来てくれなかった。

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