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微熱に疼く慕情
第1章 【渇いた心】
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「そういや何で此処に…?」
職場が変わってなければ通るはずもない駅だ
此処に居た理由を、都合の良いように解釈してしまいそうになる
「あぁ、取り引き先とご飯してた……」
「そっか……」
雨脚が強くなってきてる
2人がやっと雨宿り出来るほどのスペースで
止みそうもないゲリラ豪雨
雨の音よりも気になるのは…この胸のチクチク
視線を戻せばまた、あの頃に戻っちゃいそうで怖い
もうお互い、2年という時間が流れているはずのなに……
「………一華!?」
「えっ?」
あ……ほら、やっぱり……
真っ直ぐ見てくる変わらない大智が
時の流れなんて全て掻き消してしまう
「まだ、あの家に住んでるのか?」
「え………うん」
私が、唯一、家に連れてきた男の人
後にも先にも、大智だけだった
それくらい真剣に付き合っていたし
凄く好きだった
古賀大智……元カレと再会するなんて
「じゃあ、走るか」
「え…?」
そう言うと上着を脱いで一緒に頭から被る
「走るぞ」って雨宿りしていた場所から2人で走り出した
この雨の中、こんな事出来ちゃうのが大智らしいって思い出してる
「こけるなよ!」
「わ、わかってるよ!」
私に上着を被せてくれてるだけってわかっているのに
肩を抱かれているようで心臓の音だけが耳に響いてた
大智も覚えててくれたんだ……家までの道のり
そりゃ忘れるわけないか、2年も通ったんだもんね
元カノの家になんか、そんな簡単に行けたりするもんなの…?
コレって……最初に断るべきだった?
断る隙も与えないって、やっぱり大智らしい
そんな大胆さも好きだったから
付き合ってる間は、陽と陰みたいな関係だったと思う
隠れてばかりの私を大智は明るい場所へいつも連れ出してくれた
お日様みたいな笑顔が大好きだった
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