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微熱に疼く慕情
第1章 【渇いた心】
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返答に困ったから髪をクシャクシャして撫でた
「また連絡する」って言ってバイバイする
さっきまで縋り付いていた目が優しく笑った
少しだけ、出逢った頃の笑顔を思い出していた
マンションを出てから「私、バカだ!」って
なっても遅いよね
本当バカだよ、救いようがない
元カレの家に、掃除?作り置き?
バカじゃないの!?
それで家政婦じゃない?
思っクソ便利屋だ、バカタレ!!
それからずっと自分に説教だよ
一旦帰ってシャワー浴びて、朝ご飯食べて、
メイクして、着替えて出社
ブツブツと独り言を言っていたかも知れない
「えっ…あ、橘さん、おはようございます」
「あ……おはようございます」
何で皆さん、立ち止まって挨拶してるの?
そんな事、今までにあったか?
部長まで席に居たのに立ち上がって
「橘さん?おはよう」って……
なに?顔に何かついてます?
「おはようございます」とお辞儀した瞬間ハッとした
メイクはいつも通りだけど、眼鏡もしてない、髪も結ってない
急いで結っていつもの戦闘態勢に入る
ずっと脳内説教してて気が回らなかった
やたら他部署から呼ばれるのも朝一の姿を見られていて、出し忘れの申請書を手渡しされる
まだ締切じゃないのまで……
エレベーター内で山岸先輩とバッタリ会った
一番奥で並んで立つ
他の人には聞こえないように書類で口元隠して
「今朝、変装してなかったね?」と囁かれる
変装って……
続けて「2人だけの秘密じゃなくなったから残念」って……
耳元で喋るのズルいよね
耳だけ真っ赤になっちゃう
リアクションに困ってる私を見て楽しんでるみたい
2回断った時は悄気くれてたくせに
時々Sっ気出してくるのね、覚えておきます
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