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微熱に疼く慕情
第1章 【渇いた心】
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「すみません、送迎まで…」
「ん、良いの」
会いたいです…のメッセージひとつで待ち合わせして車で迎えに行った
良いんだよ、キミだから私も動いたの
家までは知っているけど行かない事にしている
外で会うから新鮮な気持ちになるし
素の自分を見せる必要もないからそっちの方が楽なんだよね
脇道に停車した車
名残惜しそうにシートベルトを外す彼
「また、連絡待ってます……僕からもして良いですよね?」
「うん、また会おうね」
「はい!じゃあ…」
周りに人は居ない
だから、呼び止めちゃう
そっと唇が重なって、
時間なんて止まっちゃえば良いのにね
「忘れ物」
「一華さん……」
「んふ、またね」
「まだ……忘れ物、ある気がする」
「ダメ、ほら、人来ちゃうから」
キョロキョロして「来てないです」ってワンコ顔やめて…
顔が近付いてきたら拒めないじゃない…
一度だけ離れて、すぐに後頭部から引き寄せ私から重ねる
これで最後だよって合図
見えなくなるまで手を振ってバイバイ
暫くはまた、放置かな
どれだけ待たされても、会えば強く言えない彼の性格を上手く利用させてもらってる
ズルいよね
それも覚悟の上でこの関係を続けていて……
だからきっと破綻するのも早いよ
もう要らないって言われたらそこで終わりだし
私も放置期間が長くなっちゃうかも
命の危険を感じない限り、私からは終われない
ずーっと曖昧な関係
樹くん、そんなんで良いの…?
キミならもっと、良い子と巡り会えるはずなのに……
早く目を覚ましてね……と帰り道でいつもそんな事を考えている
夢から覚めるなら、早い方が良いに決まってるもん
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