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第1章 【渇いた心】

仕事は何度か転職したが、今は食品メーカーの経理部で働いている
見た目も中身も共に真面目で通っている私
鎖骨下まで伸びた髪はひとつに纏めているし、
メイクもナチュラルでネイルも控えめ
会社では常にパソコンとにらめっこなので眼鏡をしている
必要最低限の会話もせず、ひたすら黙々とタスクをこなす毎日


働きに来ているのだから、馴れ合いは必要ない
数字が合わない時や経費申請書の未提出等があると
イライラする日もあり、陰では“氷の女王”とか“鉄仮面”とかあだ名がついているのも全然気にしない
その輪の中に入る方が虫唾が走るもの
今日も話しかけるなオーラ醸し出して事務作業に徹する


急な休みもなく、常に皆勤賞
企業に取っては有り難い存在でしょ？
チームワークとか協調性には欠ける部分はあるけどね
誰かと仲良くするつもりもないし、きっちり定時で帰るのが私のマイルール



「橘さん、本当にごめん！この経費…落ちるかな？」


営業課からこんな事はしょっちゅうあり、私をイラつかせている
作業をしながら経費申請書を目だけで確認し、
「無理です」の一言で終了
一気にピリついた空気にさせるのが私だと言われてるけど、そもそも期限内に出さないのが悪いのであって、1つ許す毎にこちらの作業にも支障が出てくる
絶対にルールは曲げない


前任者はやってくれた…だの、融通が利かない…だの好き勝手言ってくれる
部長も何かとフォローしてきて結局、しわ寄せが来る
社会人になってルールもまともに守れない人間が花形部署に居るだけでフォローしてもらえる空気……私には合わない


転職するか…と思うけど、イチから積み上げるのも結構気苦労するんだよな……
もう若さもないし