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仮)純粋にはほど遠く
第1章 50女のリアル

「松山君なら泣かせてくれると信じていたけど無理ね。
結婚生活を惰性で送る夫婦が、ある日夫がアクシデントに出会して過去に戻り、妻ともう一度恋愛からやり直す。
夫が改心して、妻を愛していた頃の気持ちを取り戻して現在に帰ってくる。
やがてガンを患った妻が夫に愛された余命を必死に生きて、最後は幸せな笑顔で天に召されるなんて有りがちじゃない?」
「やっぱりね。紀伊さんが泣くわけないし、ストーリーをボロクソに言うのは予想できてたけど、それだけ夫婦愛し合って死ぬまで仲良し夫婦で生涯を閉じるなんて素敵じゃん」
「過去に戻ったら、なるべく夫に出会わないように生きたいわたしにとっては、キラキラ過ぎるおとぎ話だわ」
「それを言われるとわたしも痛いわ」
そう言いながら、ドーナツをパクリと齧る。
映画の後、感想を述べながらお茶をするのはわたしらの定番だが、純愛というものを忘れてしまうほど時を過し、枯れたおばちゃんになってしまったのだとしみじみ思った。

