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さくらドロップ
第4章 この病を治す方法を誰か教えて
「え、ちょ、ま、待ちなさーい!」

 慌てて梯子を滑り降りて、彼の後を追う。勿論、待つなんて殊勝な事を彼がやっているわけもなく、一人階段を下りて行く後姿。駆け足で下って、何とか追いついた。

「待ってって言ったのに」

 そう文句を漏らしても、彼からは何の反応もない。何を考えているのかわからない、無感情で無表情な顔で、ただ黙々と階段を下っていく。
 眠たそうな彼はちょっとだけ可愛いと思ったけれど、こうなってしまえば彼は頑丈なバリケードに覆われて、隙の一つも見せてはくれない。でもその横顔さえも、盗み見てはときめくのだから、恋とは正に盲目なのだ。
 にやにやと口元を緩ませながらちらちら彼を見る。すると、急に目が合って、息が止まった。

「どうして屋上にいるとわかったんですか」

 しかもなんか話掛けられて声も出ない。咄嗟に反応出来ない。今絶対私、めっちゃ驚いた顔して固まってる。

「茜さん?」
「うぇいっ(ぎゃふ、また変な声出た!) あ、う、うん、あの、黒髪くん、じゃなかった、えっと、そう、こうき、孝樹くんが、そうかもって」
「アイツが?」

 そうそうと無駄に何度も肯定する。彼は少しだけ怪訝そうに眉を顰め、その後はたと何かに気付いて少し目を見開いたような、気がした。

「名前」
「あ、うん、うん、そうなの! あのツンデレくん名前教えてくれたの」

 なんだか少し嬉しくて、満面の笑みを浮かべて得意げに報告する。
 すると彼は、むつりと唇を閉ざして、立ち止まってじっと私を見詰めてくる。それにつられて私も立ち止まり、なんかよくわからないけど無言の重圧の感じて冷や汗をかきながら、黙ってその視線を受け止める。
 何、何、そんなに名前を教えるのダメなの。いや、でも、孝樹くんが自分で自分を名乗るのはよくないかな。そこは本人の自由なんじゃないのかな。二人で絶対教えないでおこーぜとか、そんな意地悪な約束でもしてたのかな、かな。

「俺は―――」

 彼は何かを言いかけて、口を閉ざした。真っ直ぐ注がれる視線が、迷いを含んで微かに揺れる。
 そんな微かな感情の変化を感じて、私も緊張と不安と、少しの期待で胸が高鳴る。もしかしたら、名前を、教えてくれるんじゃないかという、期待。
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