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檻の中の花嫁
第1章 宿命
「澪、お前はこの家へ来る定めじゃ。」


突如、家の戸口に現れた名家の使者の言葉は、澪の耳にこびりつき、現実感を奪い去った。

反論の暇もなく、荒縄で縛られ、黒塗りの馬車へと押し込まれる。

幼い弟や妹たちの泣き叫ぶ声、縋り付く母の嗚咽を背に、澪は家を後にした。

馬車の車輪が石畳を軋ませる音、轡を鳴らす馬のいななき。
揺れる車内で、澪は不安と恐怖に胸を締め付けられた。

「どうしてこんなことに……?私はどこへ連れて行かれるの……?」

頭の中を疑問が駆け巡り、澪の思考は混乱するばかりだった。

窓の外は宵闇に包まれ、提灯の灯りだけが、過ぎ去る景色を朧げに照らし出す。

遠ざかる我が家、幼い弟妹の悲痛な叫び、母のすすり泣く声。

それらが澪の心を容赦なく抉り、涙を誘った。

「ごめんね、澪……」

母の哀しげな声が、耳の奥で木霊する。

その言葉は、澪の心に深い傷跡を残した。

馬車は、やがて鬱蒼と茂る森へと入り、灯りも途絶え、闇だけが辺りを支配する。

木々のざわめき、虫の音、時折聞こえる獣の咆哮。
闇に包まれた森は、澪の不安を更に増幅させた。

やがて、馬車は重厚な門の前で止まった。

門の奥には、漆黒の闇に浮かび上がるように、巨大な屋敷が佇んでいた。

高い塀、荘厳な植樹、高い屋根、高く尖った屋根、暗く明かりのない窓。

その異様な光景は、澪を畏怖させた。

門をくぐり、屋敷へと続く砂利道を馬車は進む。
屋敷の明かりが、澪の不安を一層掻き立てる。

屋敷の玄関で待っていたのは、冷たい眼差しを向ける老齢の執事だった。

その目には、まるで感情が宿っていないかのように、ただ澪を見据えている。
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