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ある女性の物語
第1章 命の始まり

1980年の8月の暑い日。
埼玉県はその日30度を超え、多くの人が少しでも涼を取る事に必死だった中、岸達郎は噴き出す汗も気に留めず通りを全力疾走していた。
出産のために実家に帰っている妻の花菜が産気づいたとの連絡が職場に入ったのだ。
産婦人科のドアに飛び込むと義理の父が達郎を見つけ声をかけてくる。
「達郎くん。さっき生まれたばかりだよ。母子ともに健康だ」
堅物だと思っていた義父の満面の笑みを初めてみた気もするが、そこには触れずに病室を訪ね2人で向かう。
病室に入るとベッドに横たわる花菜と目があった。なぜか自然と涙があふれてきた。ベッドの横には小さなベビーベットが置かれ義理の母が覗いている。
「花菜。ありがとう」
「顔見てあげて。女の子よ」
そう言って花菜が横のベビーベットに顔をやる。
覗くと目を瞑った小さな小さな赤ちゃんがすやすや眠っていた。
「目と鼻は僕に似てるかな?口は花菜かなー」
「まだ分かんないわよ。」
そう言って義母が笑う。
指を小さな手のひらに差し出すと握り返してくる。
この世に自分の命を引き継いでくれる存在が産まれたことが何事にも代えがたく嬉しかった。
この子と花菜を一生命に変えても守っていくんだ。
強く強くそう思った。
埼玉県はその日30度を超え、多くの人が少しでも涼を取る事に必死だった中、岸達郎は噴き出す汗も気に留めず通りを全力疾走していた。
出産のために実家に帰っている妻の花菜が産気づいたとの連絡が職場に入ったのだ。
産婦人科のドアに飛び込むと義理の父が達郎を見つけ声をかけてくる。
「達郎くん。さっき生まれたばかりだよ。母子ともに健康だ」
堅物だと思っていた義父の満面の笑みを初めてみた気もするが、そこには触れずに病室を訪ね2人で向かう。
病室に入るとベッドに横たわる花菜と目があった。なぜか自然と涙があふれてきた。ベッドの横には小さなベビーベットが置かれ義理の母が覗いている。
「花菜。ありがとう」
「顔見てあげて。女の子よ」
そう言って花菜が横のベビーベットに顔をやる。
覗くと目を瞑った小さな小さな赤ちゃんがすやすや眠っていた。
「目と鼻は僕に似てるかな?口は花菜かなー」
「まだ分かんないわよ。」
そう言って義母が笑う。
指を小さな手のひらに差し出すと握り返してくる。
この世に自分の命を引き継いでくれる存在が産まれたことが何事にも代えがたく嬉しかった。
この子と花菜を一生命に変えても守っていくんだ。
強く強くそう思った。

