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わたしの日常
第4章 S川さんとの交流

「『妻』もいろいろでしょうから、『奥様』と呼んでもらってもいいのかもしれません」
「…それもそうだね。悦子はいろいろよくしてくれている。妻と言えば妻のようなものだ」
「わたしも先方のお連れさん…『れいこ』さんでしたか。そんな感じを持ちました」
「先方の浴衣姿の写真…よく撮れているね」
「雰囲気も含めて…」
「悦子もそう思ったかい。『雰囲気』が伝わってくる写真だね。向こうはそのあたりも含めてこの写真を送ったのかもしれないが…。もどかしいものだね…正直に話せないというのも」
「そうですね」
「まあ、よく考えて返事を出すことにしよう」
それでも義父はどこか楽しそうである。わたしもあの男女と縁がこれきりで切れるのはもったいないと思った。その日の夕方、義父は返信を書き上げた。
「こんなふうに書いてみたんだが、ちょっと読んでみてくれるかい」
『拝啓 S川Y男様 このたびは早速に〇〇温泉での写真をお送りいただき誠にありがとうございました。私共も旅の思い出を写真に残すというようなことには思ってもおりませんでしたが、同宿のご縁からご厚情を賜り感謝しております。大切に保管したく存じます。
撮影の腕前をお褒め頂きましたが、小生はただお渡し頂いたカメラのシャッターを押したまでのことで、写真の出来栄えがよかったとすればカメラの性能と現像が巧みでいらっしゃったものと思っております。ただ、旅の思い出をつくるお役に立てたこと誠に光栄と存じております。私共もわずか一泊二日でしたが、日常を離れて小旅行を愉しむことができました。お二人も翌日もお泊りになって存分に愉しまれたであろうこと、お送りいただいた仲睦まじいお写真を拝見して改めて感じた次第です。同好サークルの雑誌にも投稿されているとのこと、ご紹介いただければ購入して作品も拝見いたしたく存じます。
既に御察しのことと存じますが、連れておりましたのは家内ではなく、さりとて赤の他人でもなく、ただ小生にとりましては今やかけがえのない連れ合いのようなものでございます。この際申し上げれば当方もわりない仲であるのは同じでありまして、猶更お二人には親しみを覚えるところです。此方といたしましても、S川様とのご縁が続くことを願っております。
「…それもそうだね。悦子はいろいろよくしてくれている。妻と言えば妻のようなものだ」
「わたしも先方のお連れさん…『れいこ』さんでしたか。そんな感じを持ちました」
「先方の浴衣姿の写真…よく撮れているね」
「雰囲気も含めて…」
「悦子もそう思ったかい。『雰囲気』が伝わってくる写真だね。向こうはそのあたりも含めてこの写真を送ったのかもしれないが…。もどかしいものだね…正直に話せないというのも」
「そうですね」
「まあ、よく考えて返事を出すことにしよう」
それでも義父はどこか楽しそうである。わたしもあの男女と縁がこれきりで切れるのはもったいないと思った。その日の夕方、義父は返信を書き上げた。
「こんなふうに書いてみたんだが、ちょっと読んでみてくれるかい」
『拝啓 S川Y男様 このたびは早速に〇〇温泉での写真をお送りいただき誠にありがとうございました。私共も旅の思い出を写真に残すというようなことには思ってもおりませんでしたが、同宿のご縁からご厚情を賜り感謝しております。大切に保管したく存じます。
撮影の腕前をお褒め頂きましたが、小生はただお渡し頂いたカメラのシャッターを押したまでのことで、写真の出来栄えがよかったとすればカメラの性能と現像が巧みでいらっしゃったものと思っております。ただ、旅の思い出をつくるお役に立てたこと誠に光栄と存じております。私共もわずか一泊二日でしたが、日常を離れて小旅行を愉しむことができました。お二人も翌日もお泊りになって存分に愉しまれたであろうこと、お送りいただいた仲睦まじいお写真を拝見して改めて感じた次第です。同好サークルの雑誌にも投稿されているとのこと、ご紹介いただければ購入して作品も拝見いたしたく存じます。
既に御察しのことと存じますが、連れておりましたのは家内ではなく、さりとて赤の他人でもなく、ただ小生にとりましては今やかけがえのない連れ合いのようなものでございます。この際申し上げれば当方もわりない仲であるのは同じでありまして、猶更お二人には親しみを覚えるところです。此方といたしましても、S川様とのご縁が続くことを願っております。

