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わたしの日常
第1章 義父との馴れ初め
 ただ、義父も去年、定年を迎えてからは、さすがに暇を持て余したのだろうか、それまではリビングに来てもお茶を淹れるくらいで部屋に戻っていっていたのが、そのままお茶を飲みながらリビングに落ち着くことも多くなった。わたしも夫と娘が出かけてしまえば、夕方、食材を買いにスーパーマーケットに行くぐらいの用事しかないから、義父と同じ部屋にいる時間が多くなった。とは言え、お互い、口数が多い方ではないから、ただ、なんとなくリビングに一緒に居て…ということが多かった。

 『悦子さん、今日の昼は鰻でもとってみないかい? もちろんお支払いはさせてもらいますよ』
 『鰻…。しばらく食べていません…。いいんですか?』
 『たまにはちょっと贅沢してもいいんじゃないか。少々、気が咎めなくもないが、内緒にしておけばわからない。そうだな…上うな重2つでいいかな?』

 義父と男女の間柄になった日は、朝にそんなやり取りをしたのを憶えている。

 ぼんやりした意識に近くの学校のチャイムが聞こえてくる。何時のチャイムだろう…。

 『お粗末様でした…』

 『お粗末』などと感じているはずもないだろうことは、手足を投げ出して息を荒げている嫁の痴態を見遣れば一目瞭然だっただろうに、事が終わって義父はそう言った。夫が仕事で忙しい三十路の女と妻に先立たれたやもめ男がほとんど一日一緒に家にいるのだから、そういう関係になるのも時間の問題だった…とお手盛りな言い訳を頭に浮かべながら、何度も絶頂に導かれた多幸感に浸っていた。

 『疲れたかい? 悦子さん』

 『こちらこそお粗末様でした…』とでも返さないといけないか、などと思っているうちに義父が労うような言葉をかけてくる。

 『あの…お義父《とう》さんはまだ…』

 義父がまだ射精していないことはわかっていた。

 『ああ…私のことは気にしなくていいよ。悦子さんはまだ女盛りだから間違いがあっちゃいけない』

 そう遠慮する義父が愛おしくなった。わたしは2階に上がった。寝室から持って来た箱からスキンの包みを取り出して義父に渡す。買ったのは随分と前だったような気がするが、ないよりはましだろう。あると思っていたタンスの引き出しの奥に見当たらずに少々探すのに時間がかかってしまったが…。
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