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わたしの放課後
第1章 おじさんとの馴れ初め
 わたしとおじさんはお互い同じ挨拶を同時にしてお互い照れ笑いをした。それがおじさんとのなれそめ。

 訪ねてきたわたしを迎え入れると、いつものように、おじさんが入り口のガラス戸のねじを締めカーテンを閉じる。

 「いつもこれぐらいに来られるといいのにね。でも試験がしょっちゅうあったらたいへんだね」
 「いえ…。部活動もお休みなるのでうれしいんです」

 『うれしいんです』と答えてちょっと恥ずかしい気持ちになる。

 「今日も夜までいて大丈夫なの? 帰りがあまり遅いとお母さんも心配じゃないのかな」
 「遅くなっても大丈夫です。学校の図書館が閉まるまで勉強したら外食して帰るっていうことにしているから。母もその方が都合がいいはずなので」

 お店の奥の上がり框に腰かけているわたしの隣に座ると、おじさんはわたしの肩を抱いて掌で頬をゆっくりと撫でる。そして顔を自分の方に向けさせると唇を重ねてくる。

 「お母さん孝行だね、恵子ちゃんは」
 「そんなこと、ないです…」

 元教師の母は、父が単身赴任したのを機に、学習塾に講師として勤め始めた。週に2日ほど数人の小学生を教えているらしい。そして学習塾でアルバイトしている大学生と浮気している。なぜなら、わたしがはじめて青空市に寄っておじさんに出逢った日、家の手前まで来たときに、家から出てくる彼を見たから。素知らぬ顔で彼をやり過ごして、しばらくしてから家に入った。

 『あら、どうしたの? やけに早いじゃないの。早退でもしたの?』
 『今日は午後の授業が2つとも休講になったから帰ってきたの。それよりもいま出て行った人は誰?』
 『え? …ああ、わたしと同じ、塾で講師をしている人よ。来週、彼の授業かわってくれないか…ってお願いに来たの』
 『ふうん。そんなの電話ですればよさそうなのに』
 『それもそうね』

 母はそう応えたが頬は上気して目は潤んでいる。母の顔をじっと見ていると母が言った。

 『お父さんには内緒にしてね』

 女どうしで隠し通せないと思った…と後になって母は言っていた。

 『え? 別にいいけど。お姉ちゃんにも、でしょ?』
 『そうね。お願い。…恵子は明日は何時に帰る?』
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