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わたしの放課後
第1章 おじさんとの馴れ初め
 不意を衝かれて娘が帰宅したことに懲りたのだろうか、わたしが帰る時間を訊いてきた。

 『明日も来るの? 彼。話し合い、終わらなかったんだ?』

 母は黙って困ったような笑顔を浮かべていたから、それ以上詮索するのはやめた。

 『明日は、遅く帰るよ』
 『わかったわ』

 特に用事もなかったけど遅く帰ることにした。姉にも同じようなことを言われたことがある。姉はもっとストレートだった。

 『恵子、あした法事に行かないの? さっきお母さんに聞いたんだけど』
 『行かないよ。だってつまんないもん』
 『えー。行ってくれないかなあ』
 『どうして?』
 『明日、カレシ家に呼んじゃったのよね。みんな出かけると思ったから』
 『〇〇クン、来るんだ。わたし居ちゃいけないの?』
 『うん。とにかく明日はダメ』

 渋々わたしは両親と法事に行った。その後も、そんなことが何度かあって、いちいちわたしは家を追い出されていたが、そのうち姉も面倒になったのか、家にわたしが居てもカレシを呼ぶようになり自室でカレシとセックスするようになった。

 『お母さんには内緒にしてなさいよ』

 やましいことをしているのは自分の方なのに姉はいつも上からものを言った。

 『お母さんだってそういうことをしたからこそアンタもわたしもこの世に存在しているんだから』
 『そういうことをしたからって言ったって、お父さんとでしょ。それに、お姉ちゃん、そういうことして本当に赤ちゃんできちゃったらどうするの?』
 『つべこべ言わなくていいの。妹のくせに』

 結局、そのうち母にもバレて、めちゃくちゃ怒られていたけど。ただ、高校生なのに妊娠したらどうするの?、のような姉の不行跡を咎めるというよりは、恵子に見られたらどうするの?、のような妹への悪影響をかえりみない無神経さを怒っていたようで、解放されて自室に戻る涙目の姉からぎろりと睨まれたのはいい迷惑だった…。

 そんな母がわたしの帰宅予定時間を確かめたのだから、きっとそういうことだろう…と思った。家から出て行ったのは普通の真面目そうないかにも大学生です…っていう感じの人だった。遊んでいるような感じの人ではなかったから、誘ったのは母の方なのだろうか…などと妄想してしまった。
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