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わたしの放課後
第1章 おじさんとの馴れ初め
 『今日は、学校で勉強してくるから、帰りが遅くなる…ような気がする』

  二日後の金曜日。朝、わたしは母に言った。母がきょとんとした顔で聞き返す。

 『なあに? 『気がする』って』
 『え? ああ…帰りが遅く…なる』
 『遅くなるのね? わたしも今日は塾の日だから…。じゃあ、ごはんどうする?』
 『〇〇〇で食べてくるよ』

 わたしはファストフードの名前を口にした。

 『そう。じゃあ、今日はお夕食つくらないでいいわね。…なんか、気を遣ってない?』
 『え? なにも』
 『じゃあ、いってらっしゃい』

 母は帰りが遅くなるというわたしにその理由を訊ねることもなく、朗らかな声で送り出されてしまった。もちろん、もし訊ねられても、おじさんに抱かれてくるなどと正直に答えるはずもないのだけれど。母の寝室のベッドサイドにある小箱から避妊具をくすねたことも知らないだろう。母はきっと今日もあの大学生と使うのだろうし、父への口止め料と思えば罪悪感も軽くなる。母の朗らかな声を聞くたびに、くすねても気付かれないだろうと思えるくらい小箱に詰め込まれた避妊具が目に浮かんでしまう。

 学校が終わってわたしはおじさんの古書店を訪ね、そしておじさんに抱かれた。抱いてもらった…。抱いてもらおうと、わたしが目をつむったときに、おじさんは言った。

 『ありがとう。気持ちだけでうれしいよ』

 わたしはポシェットから避妊具を取り出して渡した。わたしはおじさんに抱かれる…おじさんとセックスするために来たのだから。おじさんは驚いていたけど、こう言ってくれた…。

 『お嬢さんは、清楚で知的で…賢明だね』

 避妊具を渡す様から『賢明』という言葉に繋がるとは思っていなかった。わたしの特性の三つ目は『淫ら』ではなくて『賢明』になってしまった…。

 おじさんとのセックスは、わたしにとっては甘美なものだった。甘美などという印象を抱けたいちばんの理由は、おじさんが、終始、優しく接してくれたからだと思う。おじさんがわたしの中に入って来ているのに、想像していたような痛みもなかったし、出血することもなかった。わたしは赤ちゃんのようにただ身を委ねているだけだった…。
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